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2025-12-18 20:44:00

年末、標準化の先にあるもの

年末が近づくにつれ、空気が少し張りつめてきた。
この年末年始に、多くの基幹業務システムをガバメントクラウドへと移行する。長く準備してきたので、何事も起きずに済むと信じてはいるが、油断は禁物だ。

正直なところ、落ち着かない。
だがそれ以上に、これまで積み上げてきた現場の判断と、そこから伝わってくる手応えに、安堵も感じている。

自治体20業務システム標準化をめぐる議論は、ここにきて厳しさを増してきた。
国が描いた工程表どおりに進まない自治体が明らかになり、「計画そのものに無理があったのではないか」という声も大きくなった。
想定以上にコストが上がった、現場が疲弊している、従来のやり方のほうが良かった——そうした指摘には、事実も含まれているだろう。
ただ、その議論の多くが、どうしても「今、この瞬間」だけを切り取っているようにも感じられる。

標準化は、本来もっと長い時間軸で捉えるべきものではないだろうか。

これまで地方自治体は、それぞれが独自にシステムをつくり、運用し、改修してきた。
自治体ごとの工夫や創意は確かにあったが、その一方で、データをつなぐために多くの困難があり、事務事業は同じなのに自治体が違えば仕組みが通用しない、という状態が当たり前になっていた。

標準化は、その前提を一度リセットする試みだ。
業務とデータを揃えることで、部門連携が「努力」ではなく「構造」として可能になる。
自治体同士、さらには国や公共機関とのデータ連携も、例外ではなく前提として考えられるようになる。

この変化は、大きい。

あたりまえのことだが、ネットワークは繋がってこそ真価を発揮する。
繋がることを前提にしたシステム構築は、これまでの延長線上では決して到達できなかった地点への、最初の一歩になる。

もちろん、痛みを伴わない改革など存在しない。
慣れ親しんだ仕組みを手放す不安、業務が一時的に複雑になる戸惑い、説明しきれない違和感。
それらを抱えながら、それでも現場は前に進もうとしている。

だからこそ、標準化を「失敗か成功か」「高いか安いか」だけで語ってしまうことに、どこか違和感が残る。
これはゴールではない。
「これからがスタートなんです」という担当者の言葉が、心に残っている。

標準化は、日本の行政DXにとってのゴールではなく、始まりだ。
その始まりに立ち会っていることの重さと意味を、静かに噛みしめながら、この年末を迎えている。

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