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2026-10-17 22:19:00

千代田シネマセレクションで見た光景

千代田シネマセレクションで見た光景

先日、千代田区が東京国際映画祭と共催した「千代田シネマセレクション」に参加しました。会場の様子を見て、Xに「大盛況で良かった」と短く投稿しました。この記事では、その理由になった光景を、少し詳しく書き残しておきます。

私は区の副区長ですが、この記事は個人として会場で見聞きしたことを書いたものです。事業の費用対効果については、区として必要な検証を行い、議会でも議論されるべきものと考えています。

ベルサール神田で

私が観たのは、吉永小百合さん主演の『てっぺんの向こうにあなたがいる』です。女性として世界で初めてエベレストに登頂した田部井淳子さんをモデルに、ひとりの女性の挑戦と人生を描いた作品で、2025年の第38回東京国際映画祭ではオープニング作品として上映されました。

会場のベルサール神田には、大勢の観客が集まっていました。見た限り、70歳前後と思われる方が多かったように思います。5、6人で連れ立って来た方々、年配の親御さんと中年のお子さんらしい2人連れ、ご夫婦らしい方々、おひとりで来た方もいました。

普段の映画館とは少し違う空気でした。皆さん映画を観に来ているのですが、同時に、誰かと一緒に時間を過ごすことも楽しみにしているように見えました。映画が目的であると同時に、人が集まるきっかけにもなっている。そんな印象を受けました。

スクリーンの人生と、客席の人生

作品は、世界最高峰への挑戦とともに、家庭や子育て、当時の男女の役割といった問題も描いていました。夢を追うことと、家族の中で期待される役割のあいだで、主人公はどう生きるのか。

観ながら、客席のことも考えていました。吉永さんが俳優として重ねてきた歳月と、客席の方々が生きてきた歳月は、同じ時代の中にあります。上映中、登場人物の言葉に応えるような声が客席からふと聞こえる場面がありました。スクリーンの人生と客席の人生が、同じ場所で重なっているように感じました。

「すでにある関係」を支える

地域のつながりというと、住民同士が新しく知り合うことを思い浮かべがちです。しかし、すでにある関係を保ち、豊かにすることも、同じくらい大切だと思います。

高齢の友人同士が一緒に出かける。離れて暮らす親子が、久しぶりに同じ映画を観る。長年連れ添った夫婦が、共通の思い出になる時間を過ごす。街の中で開かれる映画の催しは、そうした機会をつくります。

「映画館に映画を観に行く」というより、「街で開かれる催しに、誰かと一緒に行く」という感覚に近いのかもしれません。

「+α」をどう考えるか

映画を観る機会を届ける方法は、ほかにもあります。たとえば、一般の映画館で使える鑑賞券を配る方法です。観たい作品を、好きな日時に選べる点で、合理的な選択肢だと思います。

では、上映会にはどんな「+α」があるのでしょうか。今回の事業には、次のような特徴がありました。

  • 過去の東京国際映画祭で上映された7作品が、無料で上映された。
  • 作品によっては、監督とのトークや映画祭の見どころ解説が企画された。
  • 小さな子どもと保護者が一緒に楽しめる上映環境や、バリアフリー字幕の配慮があった。

映画という基本的なサービスに、人が集う機会と、映画祭と連携した文化体験が加わっている、と言えそうです。

もっとも、上映会という方法にも制約があります。日時と場所が決まっているため、その時間に来られない人には届きません。また、足を運ぶのは、もともとつながりのある方が中心かもしれません。上映会が新たにつながりを生んだのか、すでにあるつながりを支えたのかは、私の観察だけでは区別できません。

「+α」にいくらの費用を認めるかは、簡単に答えの出る問いではないと思います。事業費や参加者数といった数字に加え、参加者がどんな時間を過ごしたのかを丁寧に確かめながら、考えていく必要があるのでしょう。

実際に見たこと

私が観たのは、7作品のうちの1作品、1回の上映だけです。ほかの回の様子や、参加された方々の感想まではわかりません。

その1回では、多くの人が集まり、友人や家族と連れ立って映画を楽しんでいました。共感の声が客席から漏れる場面もありました。私が「大盛況で良かった」と思ったのは、そうした光景を目にしたからです。

映画そのものだけでなく、その映画を観るために集まった人々の姿も、心に残る光景でした。

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