私たちはどんな社会に暮らしているのか――ネットワーク社会をおさらいする
最近、企業などが保有する個人情報が、不正アクセスによって大量に漏えいする事件が相次いでいます。国の機関からも注意喚起が出ています。
しかし、そもそも、なぜ事業者などのコンピューター(サーバー)から情報が漏れてしまうのでしょうか。
この問題を理解するために、まずは私たちが暮らしているネットワーク社会の仕組みをおさらいしてみたいと思います。
1.私たちは、すでにつながっている
朝、スマートフォンでニュースやSNSを確認する。
何気ない日常の行動ですが、その情報はどこから来ているのでしょうか。
多くの場合、離れた場所にある別のコンピューターから、インターネットを通じて送られてきています。このように、情報やサービスを提供するコンピューターを「サーバー」と呼びます。
スマートフォンもコンピューターです。インターネットにつながるテレビや家電も、コンピューターとしての機能を備えています。インターネットとは、こうした世界中のコンピューターが、ネットワークを通じて情報をやり取りできる仕組みです。
私たちは自分のスマートフォンだけを操作しているつもりでも、実際には、その向こうにある数多くのコンピューターと通信しています。
買い物、銀行、医療、行政サービスなど、私たちの暮らしは、すでに多くのコンピューターがつながることを前提に成り立っているのです。
2.つながっていても、何でも見られるわけではない
世界中のコンピューターがつながっているからといって、誰もが自由に情報を見ることができるわけではありません。
例えば、マンションには多くの人が暮らしていますが、ほかの住人の部屋に勝手に入ることはできません。それぞれの部屋に鍵がかかっているからです。
コンピューターの世界も似ています。パスワードや暗号化、アクセス権限など、さまざまな仕組みを使って、大切な情報を守っています。
しかし、その仕組みが破られたり、正しく働かなかったりすると、本来は見られないはずの情報に、権限のない人がアクセスできてしまうことがあります。これが情報漏えいにつながります。
3.情報漏えいは、なぜ起こるのか
情報漏えいと聞くと、高度な技術を持つハッカーが、厳重な防御を突破して情報を盗み出す姿を想像するかもしれません。もちろん、そのような攻撃もあります。
しかし、情報漏えいは、必ずしも強固な鍵を壊すことで起こるわけではありません。
例えば、偽物のメールにだまされてパスワードを教えてしまう。情報を守るための設定を間違え、誰でも見られる状態にしてしまう。ソフトウェアの欠陥を悪用される。あるいは、情報を扱う人が誤って別の相手に送信してしまう。
つまり、鍵を盗まれることもあれば、鍵をかけ忘れることもあるのです。
情報漏えいは、技術的な弱点だけでなく、人間の判断や操作、管理の不備によっても発生します。
4.デジタル情報は、盗まれても元の場所に残る
ここに、現実の世界とデジタルの世界との大きな違いがあります。
財布から1万円札を盗まれれば、財布の中からその1万円札がなくなります。ところが、コンピューターの中にある情報は違います。誰かが不正にコピーして持ち出しても、元のコンピューターには同じ情報が残っていることがあります。そのため、盗まれたことにすぐには気づかない場合があるのです。
しかも、デジタル情報は、ほとんど品質を落とさずに何度でも複製できます。一度流出した情報が、さらに別の人へと渡り、広い範囲に拡散する可能性もあります。
これが、デジタル社会における情報漏えいの大きな特徴です。
5.ネットワークの危険は、目に見えない
私たちが歩く道路に穴が開いていれば、通りかかった人も異常に気づくことができます。道路や公園など、物理的な公共空間の不具合は、目に見える形で現れることが少なくありません。
しかし、コンピューターやネットワークの中で起きている異常は違います。誰かが不正に情報を持ち出していても、その様子を普通の利用者が目で確かめることは困難です。
もちろん、専門家は通信記録や監視システムを使って異常を調べています。それでも、膨大な情報の中から不正な動きを発見するには、専門的な知識や技術が必要です。
私たちは毎日インターネットを利用していますが、その安全性を自分自身の目で十分に確かめることはできないのです。
6.つながりは、他人のシステムにも私たちを依存させる
私たちが使うサービスは、その運営会社だけで完結しているとは限りません。
外部のクラウドサービスを利用していたり、ほかの企業の通信設備や認証の仕組みを利用していたりすることがあります。
そのため、自分が使っているサービスそのものが攻撃されていなくても、それを支える別のシステムに問題が起きれば、影響を受けることがあります。
私たちは、自分が直接知らない多くの組織のコンピューターにも、生活を支えられているのです。
おわりに――つながる社会を理解する
ここまで、ネットワーク社会の仕組みと情報漏えいが起こる理由について、おさらいしてきました。確認したポイントは、次の6つです。
- 私たちは、すでにつながっている社会で暮らしている。スマートフォンなどは、離れた場所のサーバーと通信してサービスを利用しています。
- つながっていても、すべての情報を自由に見られるわけではない。パスワードや暗号化、アクセス権限で、大切な情報が守られています。
- 情報漏えいは、さまざまな原因で発生する。パスワードの盗難、設定ミス、ソフトウェアの欠陥、人間の操作ミスなどが原因になります。
- デジタル情報は、元の場所に残したまま複製できる。盗まれても気づきにくく、一度流出すると広く拡散する可能性があります。
- ネットワークの異常は、目に見えにくい。発見には、専門的な知識や監視の仕組みが必要です。
- 私たちは、他の組織のシステムにも支えられている。自分が注意していても、サービスを支える別のシステムが攻撃されれば、影響を受ける可能性があります。
インターネットの便利さと情報漏えいの危険性は、どちらも「つながっている」という仕組みと深く関係しています。
だからこそ、情報漏えいを単に誰かの不注意や、一企業のセキュリティ対策の問題として捉えるだけでは十分ではありません。
私たちは、すでにつながり合い、互いに依存する社会の中で暮らしています。
コンピューター同士の通信が、私たちの社会を支える重要な基盤となっている。
まずは、そのことについて共通の認識を持つことが、これからのデジタル社会の安全を考える出発点になるのではないでしょうか。